はじめに|妊娠中の貧血は“体の変化”でもあります
妊婦健診で「貧血気味ですね」と言われ、不安になる方は少なくありません。
しかし妊娠期は、生理的な体の変化により貧血になりやすい状態です。
大切なのは、
- 何が起きているのかを理解すること
- 数値の意味を知ること
- 適切に対策すること
この記事では管理栄養士の視点から、妊娠期の貧血を科学的根拠に基づいて丁寧に解説します。
妊娠期の貧血とは?
■ 妊娠性貧血(生理的貧血)
妊娠中は血液量が約40〜50%増加します。
ただし増えるのは主に血漿(液体部分)であり、赤血球の増加はそれに追いつきません。
その結果、血液が薄まった状態になります。
これを
👉 妊娠性貧血(生理的貧血)
と呼びます。
これは妊娠に伴う自然な変化です。
■ 鉄欠乏性貧血との違い
問題となるのは、体内の鉄そのものが不足する
👉 鉄欠乏性貧血
です。
特徴
- ヘモグロビン低下
- フェリチン低下(貯蔵鉄の減少)
- 小球性低色素性貧血
フェリチン値が12ng/mL未満で鉄欠乏が疑われます。
「Hbはそこまで低くないけれどフェリチンが低い」場合も、将来的な貧血リスクがあります。
妊娠中の診断基準
| 妊娠時期 | 貧血の基準 |
| 初期・後期 | Hb 11.0g/dL未満 |
| 中期 | Hb 10.5g/dL未満 |
※医療機関により若干の差があります。
なぜ妊娠中は鉄不足になりやすい?
妊娠全期間で必要な鉄は約800〜1000mgとされています。
主な理由:
① 胎児が鉄を蓄える
② 胎盤形成
③ 母体の血液量増加
④ 出産時の出血に備える
さらに、つわりによる摂取不足も影響します。
症状
- めまい
- 立ちくらみ
- 動悸
- 息切れ
- 強い疲労感
- 氷食症(氷を食べたくなる)
無症状のこともあるため、健診が重要です。
赤ちゃんへの影響
軽度であれば過度に心配する必要はありません。
ただし重度では
- 低出生体重
- 早産
- 胎児発育遅延
のリスクが報告されています。
早期対策が重要です。
妊娠期の鉄必要量
日本人の食事摂取基準(2020年版)より:
| 時期 | 付加量 |
| 妊娠初期 | +2.5mg |
| 妊娠中期・後期 | +9.5mg |
中期以降に必要量が急増します。
食事でできる具体的対策
食事でできる具体的対策
① ヘム鉄を優先する
吸収率15〜25%と高い。
例:
- 牛赤身肉100g:約2.5mg
- かつお100g:約1.9mg
- 鶏レバー50g:約4mg
👉 週に2〜3回、赤身肉や魚を取り入れるのが理想です。
⚠ 注:レバー摂取時のビタミンA過剰に注意
レバーには鉄が豊富ですが、同時に**レチノール(ビタミンA)**も多く含まれます。
妊娠初期にレチノールを過剰摂取すると、胎児への影響が懸念されています。
■ 妊娠中のビタミンA耐容上限量
👉 2700μgRAE/日
鶏レバー50gで約700〜800μgRAE含まれるため、
✔ 毎日大量に食べるのは避ける
✔ 週1回少量程度にとどめる
ことが安全です。
※野菜由来のβカロテンは過剰症の心配はほぼありません。
② 非ヘム鉄+ビタミンC
非ヘム鉄は吸収率2〜5%。
例:
- ほうれん草
- 小松菜
- 納豆
- 豆腐
+
- パプリカ
- ブロッコリー
- キウイ
を組み合わせると吸収率UP。
③ 吸収を妨げる飲み物
- コーヒー
- 濃い緑茶
→ 食後1時間ほど空けると安心。
鉄剤・サプリとの違い
| 種類 | 特徴 |
| 医療用鉄剤 | 含有量が多い |
| 市販サプリ | 予防向き |
| 食事 | 継続的土台作り |
中等度以上では食事だけでは改善困難。
医師の指示が優先です。
受診の目安
- Hb 10g/dL未満
- 強い息切れ・動悸
- 日常生活に支障
自己判断で放置しないこと。
まとめ|妊娠期の貧血は“正しく整える”ことが大切
妊娠期の貧血は珍しくありません。
しかし、
- 数値を理解する
- 鉄を意識する
- レバーのビタミンA過剰に注意する
- 必要なら治療を受ける
ことで、安心して妊娠期を過ごすことができます。
完璧を目指すのではなく、
“整えていく”意識で十分です。
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