はじめに|カルシウムは「今」と「未来」の両方を守る栄養素
妊娠中、「赤ちゃんの骨のためにカルシウムを摂らなきゃ」と思いますよね。
それは間違いではありません。
けれど本当に大切なのは、
✔ 赤ちゃんの骨をつくること
✔ ママの骨を守ること
✔ 将来も丈夫な足腰を保つこと
妊娠期は、
一生の骨の健康を考える大切なタイミングでもあります。
この記事では管理栄養士の視点から、
- 妊娠中の必要量
- 不足の影響
- 骨密度との関係
- 将来の骨粗しょう症リスク
- 今日からできる具体策
まで丁寧に解説します。
妊娠中のカルシウム必要量
日本人の食事摂取基準(2020年版)
18〜49歳女性:650mg/日
※妊娠による付加量は設定なし
なぜ付加量がないの?
妊娠中は、
▶ 腸からのカルシウム吸収率が約2倍に上昇します。
これは活性型ビタミンDの増加によるもの。
つまり、
「たくさん摂る」より
「不足させない」ことが大切。
でも日本人女性は不足傾向
平均摂取量:約450〜500mg。
妊娠前から不足している方が多いのが現実です。
妊娠週数ごとの変化
妊娠初期
骨形成はまだ少なめ。
体の準備段階。
妊娠中期
骨の基礎形成が進む。
妊娠後期
骨形成が最も活発。
胎児は1日200〜300mgのカルシウムを取り込みます。
後期は特に意識したい時期です。
不足するとどうなる?
体は血中カルシウムを一定に保つため、
👉 母体の骨からカルシウムを動員します。
通常は産後に回復しますが、
- もともと摂取量が少ない
- 授乳期も不足が続く
場合、回復が不十分になることがあります。
妊娠期と将来の骨密度の関係
女性は閉経後、
女性ホルモンの低下により骨量が急減します。
そのとき重要なのが
👉 若いころの「骨貯金」
妊娠・出産世代は骨量ピーク期。
ここで極端に不足すると、
将来の骨粗しょう症リスクに影響する可能性があります。
将来の「足腰」を守る視点
カルシウム不足は、
✔ 骨粗しょう症
✔ 転倒骨折
✔ 寝たきりリスク
につながります。
妊娠期の栄養管理は、
未来の自分の自立を守る準備でもあります。
効率よくカルシウムを摂るために大切なこと
カルシウムは、ただ量を増やせばよいという栄養素ではありません。
「吸収されやすい形で」「続けられる方法で」取り入れることが何より大切です。
ここでは、妊娠中でも無理なく実践できる方法を具体的に解説します。
① 吸収率の高い食品を上手に使う
カルシウムは食品によって吸収率が異なります。
特に吸収率が高いのが乳製品です。
牛乳やヨーグルトに含まれるカルシウムは、約40%が体に吸収されるといわれています。
一方で、
- 小魚(しらす・いわしなど)は約30%前後
- 小松菜などの青菜類は約20〜30%
- 大豆製品は約20〜30%
- ほうれん草はシュウ酸の影響で約5%程度
とされています。
このように、同じ「カルシウムが多い食品」でも、
体に取り込まれる割合は少しずつ異なります。
そのため、
✔ 吸収率の高い乳製品を“土台”にする
✔ 大豆製品や青菜、小魚を組み合わせる
というバランスが理想的です。
また、例えば,
- 牛乳200mlで約220mg
- ヨーグルト100gで約120mg
- スライスチーズ1枚で約120mg
1日1回どれかを取り入れるだけでも、必要量の約3分の1が補えます。
「牛乳を毎日飲まなければいけない」と考える必要はありません。
朝にヨーグルトを添える
間食にチーズを選ぶ
このような小さな工夫で十分です。
② 乳製品が苦手でも大丈夫 ― 大豆製品という選択肢
妊娠中はにおいに敏感になり、牛乳が飲めなくなる方もいます。
その場合は、大豆製品が心強い味方になります。
木綿豆腐150gで約180mg、
厚揚げ1枚で約240mgのカルシウムが含まれています。
例えば、
- 朝のみそ汁に豆腐を入れる
- 夕食の主菜を厚揚げ入りの炒め物にする
それだけで、しっかり補うことができます。
「乳製品が苦手=不足する」と心配しすぎなくて大丈夫です。
③ 小魚や青菜は“積み重ね”で効いてくる
しらすや小松菜などは、1回で大量に摂る食品ではありません。
しかし、
- しらす大さじ2で約60mg
- 小松菜1束で約170mg
少しずつでも毎日積み重ねることで、大きな差になります。
ごはんにしらすをのせる
小松菜を副菜に取り入れる
こうした“日常の選択”が、将来の骨を守ります。
④ 吸収を高める栄養素も忘れない
カルシウムは、単独では十分に働きません。
✔ ビタミンD(鮭・きのこ・日光)
✔ マグネシウム(ナッツ・海藻)
✔ たんぱく質
これらの栄養素はカルシウムの吸収を高めてくれます。
特に重要なのがビタミンDです。
ビタミンDはカルシウムの腸からの吸収を助ける役割があります。
鮭やいわし、きのこ類に多く含まれ、
さらに日光を浴びることで体内でも作られます。
妊娠中でも、体調がよければ
1日15〜30分程度の散歩は骨の健康にとても有効です。
また、適度なたんぱく質も骨の土台になります。
「カルシウムだけ」に偏らず、
食事全体のバランスを整えることが大切です。
⑤ カルシウムの吸収を妨げるものにも少し気を配る
カルシウムは「摂ること」も大切ですが、
実は体に吸収されにくくなる要因もあります。
とはいえ、神経質になる必要はありません。
日常の中で少し意識する程度で十分です。
■ シュウ酸(ほうれん草など)
ほうれん草には「シュウ酸」という成分が含まれています。
シュウ酸はカルシウムと結合すると、体に吸収されにくくなります。
ただし、
✔ 下ゆでをすればシュウ酸は減らせる
✔ ほうれん草=食べてはいけない、ではない
という点は大切です。
「ほうれん草は吸収率がやや低め」程度の理解で十分です。
■ フィチン酸(未精製穀類・豆類)
玄米や全粒穀物、豆類に含まれるフィチン酸も、
カルシウムと結合して吸収をやや下げることがあります。
しかし、これらの食品は食物繊維やミネラルも豊富です。
通常のバランスのよい食事であれば、
大きな問題になることはほとんどありません。
■ 過剰なリンと“Ca:P比”のバランス
リンは骨の材料として必要なミネラルです。
しかし、加工食品やインスタント食品、清涼飲料水などに多く含まれる「リン」を過剰に摂取すると、
体内のカルシウムとのバランスが崩れることがあります。
骨の健康を保つ理想的な比率は、
👉 カルシウム:リン=1:1〜2:1
といわれています。
現代の食生活ではリンの摂取が多くなりがちです。
そのため、
✔ 加工食品に偏りすぎない
✔ 清涼飲料水を習慣化しない
といった意識が、カルシウムを無駄にしないことにつながります。
■ 塩分の摂りすぎ
塩分を多く摂ると、尿中へのカルシウム排泄が増えるといわれています。
妊娠中はもともと減塩が推奨される時期でもあります。
✔ 味付けを少し薄めに
✔ 出汁を活用する
こうした工夫は、血圧だけでなく骨の健康にもつながります。
神経質にならなくて大丈夫
ここまで読むと、
「気をつけることが多すぎる…」
と感じるかもしれません。
ですが、通常の家庭料理を中心とした食生活であれば、
過度に心配する必要はありません。
大切なのは、
✔ 加工食品に偏りすぎない
✔ 極端な食事をしない
✔ 栄養をバランスよくとる
ことです。
カルシウムは「足す」ことと同じくらい、
「バランスを整える」ことが重要なのです。
⑥一度に大量ではなく“分けて摂る”
カルシウムは一度に大量に摂っても吸収率が下がります。
1日モデル例(約650mg)
朝:ヨーグルト(120mg)
昼:小松菜おひたし(150mg)
夜:豆腐半丁(180mg)
副菜:しらす(60mg)
間食:チーズ(120mg)
→ 約630mg
特別な食事は不要。
朝・昼・夜に分けて摂ること。
このように分散させると効率的です。
⑦続けられる形がいちばん大切
妊娠中は体調も変わりやすく、完璧な食事を毎日続けるのは大変です。
だからこそ、
「これならできそう」という方法を選ぶこと。
今日すべて整えなくても大丈夫です。
1日1回、カルシウム源を意識する。
それだけでも十分意味があります。
サプリは必要?
基本は食事優先。
ただし
- 摂取量が極端に少ない
- 妊娠高血圧リスクあり
- 医師から指示あり
なら検討。葉酸のサプリメントの中にカルシウムが含まれていることもあります。
過剰摂取の注意
カルシウムの耐容上限量:2500mg/日
これは通常の食事ではほぼ超えないと考えられる量です。
サプリの重複に注意しましょう。
まとめ|妊娠期は“骨の未来”を整えるタイミング
カルシウムは、
✔ 赤ちゃんの骨
✔ ママの骨密度
✔ 将来の足腰
✔ 骨粗しょう症予防
すべてに関わる栄養素です。
妊娠中は、
「特別に増やす」より「不足させない」。
そしてそれは、
未来の自分を守る選択でもあります。
妊娠期は赤ちゃんのためだけでなく、これから何十年と続く自分の足腰を守るための大切な時期です。
カルシウムを効率よく摂るために必要なのは、
・吸収率のよい食品を知ること
・不足しがちな食習慣に気づくこと
・無理のない形で続けること
特別なサプリや高価な食品ではなく、
日々の食事の中に少し意識を向けること。
その積み重ねが、未来の体を支えてくれます。
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